すきなもの。 *第1話*
「ちゃー!三河屋ですー!」
「ちょっとまて、それ違うだろww」

そう言ってドアを開け放った結城杏に向かって速攻のツッコミを入れたのは社員の四方 無畏だった。
「な、なによ。なんかもんくあるのー??!」
「いや、別にないけど・・・」
「そう、ならよし。カヲリさんー!今日の夕食はカヲリさんの作ったパスタがいいー!」
「いいね〜。カヲリさんの作ったパスタはおいしいしねw」
「おお、四方よくわかってるじゃなーい」
杏と四方はいつもこんな感じのやり取りをどこでもやっている。
その様子をみてカヲリとスピキオは和んでいると言うが・・・
どうみてもボケ、突っ込みな感じがしてならない。

カヲリと呼ばれた彼女は優羽 カヲリという。
おっとりしており、杏とは全然タイプの違う人間だが、だからこそうまく付き合えているのかもしれない。でも実は、趣味や好きなものが似てたりとする部分があるらしいが。

「Σって昨日もパスタだったじゃないですかっ」
「だっておいしいんだもんー!ねー四方っw」
「ねーw」
その通り、昨日もパスタだったのだ。
でもなぜか杏と四方はそれでも食べたがる。まあ、普通においしいからなんだろうが。
「あ、でも今日は杏さんの得意なハンバーグが食べたいですっ!」
「Σ(△||)えぇ〜っ」
「あ、ハンバーグもいいね」
「私、杏さんの作ってくれたハンバーグ大好きなんですっ!!」
「ソース甘いよ・・・?」
「甘いのがいいですっ!ぜひっ!」
この3人は物すごく仲良しで一緒にご飯を食べたりするのが当たり前なのだが・・・
そんな中でもカヲリの言う“杏のつくったハンバーグ”が最近彼女の中でマイブームらしいのだ。
彼女がそれを言い出したら、誰もパスタを作ってとは言えないのだ。
何故だろう・・・。カヲリは実はこの中で一番強いのではと思わなくもない。
カヲリに言われた杏は腕まくりして答えた。
「うんっ!じゃあ今日はカヲリさん大好きなはんばーぐにしよう!」
「はいですっ!」
「・・・カヲリさん巧いな」

「四方なんか言った?あーハンバーグ嫌なんだ?じゃああげないからいいよ!」
「ちょww ヒドイ。そんな事言ってないのに!!」
「ん?そなの。んじゃ何?」
「楽しみだなーって言ったんだよw」
「ふーん。うそつきは舌ひっこぬかれるよー?まあいいや作るねーてきとーに遊んで待っててw」
四方は一命を取り留めたようだ。杏が機嫌を損ねると怖いというのを彼は過去に身をもって体験しているようで、この辺の扱いは激しく巧いのだ。まあその過去の話はおいておこう。
杏は歌を歌いつつキッチンにたって調理を始めた。
カヲリは椅子に座りその姿を横で眺めつつスピキオを撫でていた。
四方はお店の冷蔵庫を開け、食材の在庫を調べて足りないものはないかと数を考えていた。
「杏さん、何か手伝いましょうか?」
「あ、うんっ!じゃあコレ味見おねがいー!食べてみたんだけどちょっと自信なくて」
そういって、カヲリは杏から差し出されたソースをなめてみる。
醤油ベースなのに甘い。
ソースが甘いというのが初めて杏の作ったハンバーグを食べてカヲリが一番驚いたことだったらしい。
「おいしいですっ!」
杏はカヲリの顔を見てにっこりと笑ってありがとうと言った。
カヲリもまた杏の笑顔をみて笑顔になった。
「カヲリさん今日のハンバーグにはチーズをのせておくねw」
「わ、ありがとうございますっ!」
杏はハンバーグにチーズをのせフライパンに蓋をした。
「これであとはチーズが溶けるのを待つだけ。すぐできるからまっててね」
ハンバーグを焼き始めた頃杏はつけ合わせのポテトを揚げており、揚がっていたので四角いプレート皿に盛り付けを始めた。
ポテトとレタスを盛り付けて、焼きあがったハンバーグをのせた。
ハンバーグソースも準備終わって、添えた。


「はーい!できたよー!!」
そういって杏は満面の笑みでテーブルに並べた。

「おいしそうーです!Σ今日はポテトもついてるっ!」
「あはは今日は畑からじゃがいもを採ってきてたからね。あったかいうちにどうぞーw」
「杏の作るハンバーグはおいしいからな。何度も食べてるけどさw」
「ははは、四方ちゃっかりしてるー!」
「でもでも、四方さんのいう通りおいしいーですv」
照れに照れまくってる杏。
さらにほめつつハンバーグをほおばる2人。
杏に食べさせてもらっている一匹。
今夜も大好きな人たちと一緒に食事をする。
とっても幸せな時間。これが杏の一番の宝物。

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作:結城杏